男「あ~腹へったな、コンビニでも行くか」
女「そうだね、私もお腹減っちゃった」
ウィンッ
店長「いらっしゃいませ~」
男(店内には、店長らしき男と、品出しをしている女が一人、か…。特に変わった様子はないな)
女「男くん、難しい顔してどうしたの?早くご飯選ぼうよ!」
男「あぁ...」
店長「どうぞごゆっくりご覧くださいませ~」
女「う~ん、無いなぁ」
男「何か探しているのか?」
女「新発売の『もっちりふわふわケーキ』っていうお菓子が美味しいって、女の子に人気のインフルエンサーが言ってたから探してたんだけど、ここには売ってないのかなぁ。店員さんに聞いてみよっと」
店長(あれを探しているのか、それならあそこに......)
男「いや、その必要はない......お前が探しているケーキなら......その二つ奥の棚の、右下のほうにあるぜ」
店長(な、なにぃ!?)
女「二つ奥の棚......あった!男くんすごーい!このお店よく来るの?」
男「いや......この店に入ったのはこれが初めてだ。」
女「えっ、じゃあどうしてわかったの!?」
店員(そうだ...あの客はこの店に来るのは初めてのはず......!!だからあのケーキがあそこにあることをやつは知っているはずはないのに......なぜわかった!?)
男「簡単なことだ......今品出しをしている店員がそこにいるな」
女「あの女の人のこと?」
男「そう...女だ。このケーキは女の子に人気がある...お前はそう言ったな?」
女「うん、言ったけど...でもそれがどうしたの?」
男「あの女をよく見ろ。ケーキの柄がプリントされたスマホカバーを使っている。つまりケーキが好きということだ。当然新発売のケーキも気に入っているはず。しかもあの女の髪型は、ポニーテールを左サイドでまとめたものだ。ケーキを食べるとき、髪型が邪魔にならないようにしたんだろう......相当のケーキマニアということだ」
女「確かに!あの髪型なら、ケーキを食べるときの邪魔にはならないもんね!」
店員(くっ......まさかそれだけで、あの店員の女がケーキマニアだということを読み取っただと!?こいつ...一体何手先まで読んでいるんだ...!しかし妙だ、それだけでは商品の場所まではわからないはず......!)
男「お前、もし自分が品出しをする立場だとして、自分が好きな商品を置くとしたら、どこに置く?」
女「好きな商品を置くとしたら......はっ!!なるべくほかの人に買われないように、奥の、右下のほうに置こうと思う!!」
店員(な、なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?)
男「そうだ。人気商品だから、無くならないよう見つかりにくいところに置く...それはつまり
二つ奥の棚の、右下のほうということだ!!」
店長「ば、馬鹿なっ!!こんなに簡単に見破れるはずがない!!これはイカサマだ!!」
男「ふん......あの女の店員を教育したのは、お前だな?」
店員「そうだ...あの女が新商品をあそこに隠す理由......俺たち先輩バイトたちが研究に研究を重ね、ようやく原因が解明したというのに......!それを、今来たばかりの!!!!お前が!!!」
男「ふー……この程度の問題に、それだけ時間をかけているようじゃ、この店のレベルも知れたものだな」
店員「くそがぁぁぁ!!ぶん殴ってやる!!!」
男「おっと、お前のパンチは俺には絶対に当たらないぜ。なぜなら、俺は常にお前の”右側”をキープしているからな」
店員「な......なぜ俺が右手を使えないことが分かった!?」
男「簡単なことだ......お前たち店員は、レジの操作や在庫の補充など、日常的に右手を酷使している......右手は大切な商売道具だからな。本能的に守ろうとしているんだよ」
店員「くそっ......!ならばこれでどうだ!!!」
男「足での攻撃だと?それも無駄なことだ......なぜならお前たち店員は”立ち仕事”。足は常に消耗されていて使い物にならない」
店員「くっ...完敗だ......」
男「チェックメイトだ。おい、品出しをしている女、お前だ。お前がレジを打て」
女店員「はっ、はいぃぃ!!」
女「男くん、かっこいい......」
こうして男は右手に女、左手に女店員をはべらせ、店の外へと消えて行ったのであった。
─完─