ノンストップいぐざむ

細かいことは気にしないで生きています。

初めてのバリウム検査

 

今日は健康診断を受けた。

バリウムとか飲まされたりする、ちょっと本格的なやつ。

 

5階建てのクリニックの受付は、最上階の5階。

エレベーターの横に掲示してある案内には、人間ドックの文字が。

俺もついに人間ドックデビューか......としみじみしたが、そんな感慨を軽々と押しのけて、産まれて初めてのバリウム検査への緊張感が俺を襲った。

 

 

──6連勤目の朝、これから出勤だ。っていう時の不快感を100だとしたら、バリウムはいくつですか?

 

これは俺がバイト先で、休憩が被った仲良しの中年社員であるSさんに、バリウム検査について尋ねた時の言葉だ。

俺は初めてのバリウム検査にビビり散らかしていた。バリウムを経験した者は口を揃えてバリウムは嫌だ、不快だという。こういう物は個人差もあるだろう。経験しなければ分からない部分もある。覚悟を決めるしかないのだ。

だがせめて、どのくらい嫌なものなのか情報だけでも集めておきたい。

 

──うーん、80くらい?

 

なんだ、意外とそんなものなのか。

俺はてっきり150くらい行くものだと思っていたが、6連勤目の朝の不快度の80%くらいならそんなに怯えることも無いのかも知れない。

安堵した俺は礼を言った。

健康診断歴ン年のベテランがそういうなら、きっとそうなのだろう。そういえばSさんは何回くらいバリウム経験してるんだろうか。

 

──Sさんって今、何歳でしたっけ?

 

──僕?17歳。

 

こいつだけ、ケツからバリウム入れればいいのに。

 

 

 

受付でカルテ?を受け取る。今日実施する検査項目がずらっと書いてあって、それをやったかどうかのチェックみたいなのを、クリニックの人が入れていくようだった。

 

カルテを見れば、自分が次にどこに行くべきなのかが分かった。まずは4階に降りて心電図だな。

心電図の検査を受けると、心電図のところのチェックボックスにチェックが入る。まるでスタンプラリーみたいだなぁと、少しワクワクした。

わくわく人間ドックスタンプラリーを終えたところで、もらえるものは検査結果だけなのだけれど、同時にバリウムを終えたという安堵感も手に入るなら、人間ドックスタンプラリーも悪くないのかもしれない。

 

 

いや、別にそんなことない。騙されるな。

 

 

そんなこんなで検査を順番に受けて行き、ついにバリウムの番が来た。

結論から言うと、バリウムはそこまで恐れるほどの物でもなかった。

確かに、めちゃくちゃ炭酸的なものを飲まされた後、変なもん飲んでゲップするなは酷な話ではあったけど、まぁ別になんとかなったし

ゲロマズと聞いていたバリウム液も、まぁ別に飲み込めないほどではなかった。

 

ただ、ゲップしないようになにかを飲むのが大変で、勢い余ってゲップしちゃいそうだったから、必死に抵抗しながら少しずつ飲んでたんだけど

おいしくないのは分かるけど早く飲んで!と怒られてしまったのは腑に落ちない。

違うんだ。まずかったからじゃないんだ。と抗議したかったが、ゲップと一緒に飲み込んだ。

 

その後は、手すりにつかまりながらグルグル回転するアトラクションを一通り楽しんだ後、残った検査を受けて、全行程が終了した。

すっかりチェックボックスが埋まり切ったカルテを眺めて、バリウムを克服できたという実感に思わず笑みがこぼれそうになる。

 

景品はないけど、悪くないスタンプラリーだったな。

 

そんな想いで俺は受付に戻り、受付嬢にカルテを渡した。

受付嬢はカルテを受け取ると、笑顔で俺に言った。

 

──お疲れ様でした!これで検査は終了となります。あちらのお飲み物はご自由にお飲みください。

 

え?飲み物?

受付嬢が示した先には、フルーツジュースやコーヒー牛乳のパックが入った、小さなガラス張りの冷蔵庫があった。

 

景品あるやん。

 

 

─完─